リトル・ブル　1巻　剛速球を投げる少女が正体を隠して高校野球に殴り込み

『コミック・ブル』連載、「リトル・ブル」の1巻です。
夏の甲子園が中止らしいと報道があった中、こんな漫画はいかがでしょう。女子高生が高校野球の世界に正体を隠して飛び込み、剛速球を投げて活躍するという痛快野球漫画です。漫画家はこれが初コミックスとなる佐藤駿光氏。絵柄はパッと見て いのうえ空氏に似てる気がする。

天手東高校は4大会連続して地方大会の決勝で敗れ、甲子園行きを逸していた。新年度となって主将の馬場は新入生勧誘に必死。うちはピッチャーがダメだから甲子園に行けないんだ。とにかくピッチャーが欲しいと意欲満々です。
そこで思い出したのが牛島 翔。シニアリーグにいた際、2年下の翔に抑えられた苦い記憶が蘇ります。その翔は今どこに…って、新入生代表になってるじゃん！　ならば勧誘するしかないよねー。ところが翔と会ってみて予想もしない返事が返って来た。

あれは俺じゃなく妹のエミだった！
事情があってエミは女子であることを隠し、翔の名を語ってマウンドに立っていたと聞かされた馬場は驚きを禁じ得ない。翔はエミの頭脳を奪った代わりに、エミは翔の野球の天稟(生まれ持っての才能)を奪って生まれてきたと力説します。
事実、いま投げている豪速球はなんだ？
とても女子が投げられる球じゃない！

翌日、改めて野球部監督とメンバー一同を前にして投げさせたところ全員が口アングリ。150kmはあるだろう快速球でキャッチャーミットが「ドゴン」と大きな音を立てるのだから、驚かない方がおかしいというものだ。けれど問題はその扱い。知っての通り高校野球では女子が参加できません。でもこの才能は惜しい！　今の内から試合に出して話題になれば、甲子園に出られるんじゃね？　ともかく明日の練習試合は性別を隠して先発することになりました。

何者だ アイツはっ！！
豪速球で三振を取りまくるエミ(登録名は翔だけど)に対して相手校がこう叫ぶのは当たり前！　途中、ホームランになりそうなファールを打たれるも、更にスピードを上げて三振を奪うとは気合もノッてます。キャッチャーの猫宮は思う。
この女…本当にウチのエースになれるニャ…！！

次なる練習試合は春の地区大会決勝で負けた山南高校。夏の大会の命運を分けるかもしれない一戦になります。相手校のピッチャーは全国レベルの瀬野。とある件で面割れしてしまったためエミはベンチスタート。そんなこともあって天手東は1回表で6失点してしまう。

楽勝ムードが漂う山南の気を引き締めたのはブルペンから聞こえてくるドゴン。
表情には出さないもののエミの静かに燃える心情が伺えます。

ここ最近に読んだ漫画で最も痛快でした。やはり姑息な手段を使うのではなく、実力を持って大きな壁に挑んでいく姿は格好良く思えますね。

リトル・ブル(1) (講談社コミックス月刊マガジン)